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坐漁荘
かおりによる おもてなしのかたち

坐漁荘 かおりによる おもてなしのかたち

今年2月14日に創業50周年を迎えた伊豆・浮山温泉『坐漁荘』。
古き良き日本の温泉宿として、ゲストに癒しのひと時を提供してきたこの宿は、2014年に国際的リゾートホテルグループ『ABBA RESORTS』日本第1号のリゾートとしてリニューアルオープンしました。“日本文化を継承する宿”として内外からのゲストを魅了する新生・坐漁荘で、おもてなしの一旦を担うのが、『麻布 香雅堂』が監修したオリジナルの衣装香です。

  • 山田 悠介
    『麻布香雅堂』
    代表取締役社長
    山田 悠介
  • 原田 明子
    『坐漁荘』
    宿泊部ゲストリレーションズ
    原田 明子
  • 新井 裕子
    『坐漁荘』
    支配人
    新井 裕子

—–  体験できる日本文化、お香に注目

山田:リニューアルオープンに際し、お香を取り入れることになった経緯を教えてください。

新井:『坐漁荘』では、創業当時から受け継いできた「日本文化を守り、伝えてゆく」という姿勢を大切にしています。3年前にオーナーが外国人に変わってからも、その姿勢は変わりません。スタッフが日本人ならではの所作やおもてなしの作法でゲストをお迎えするのはもちろんですが、お客様にも滞在中に日本文化を“体験”していただきたいと考えました。

山田:体験できる文化の一つとして、お香に注目されたわけですね。

新井香りは形がなくても、記憶にしっかりと刻まれますよね。私自身、ゲストとしてこの宿に泊まったことがあるのですが、その時のことは部屋に置いてあった香袋の匂いとともに思い出されます。この感覚をぜひお客様にも味わっていただきたいと思い、まずはお手洗いに香袋を置いたり、売店にお香を置いたりすることから始めました。

山田:香りは無意識のうちに、記憶に残ることがありますからね。


昼間の坐漁荘

—–  ご縁は偶然に、やがて必然に

山田:ところで、お香を扱う店は他にもたくさんあるなか、『麻布 香雅堂』にお声をかけてくださったきっかけはなんだったのでしょう。

新井:お香についていろいろと調べていくうちに、香雅堂さんをはじめ、いくつかのお店があることを知りました。とにかくまずは自ら体験を、と思って初心者向けの講座を探していたところ、ちょうど香雅堂さん主催のワークショップがあったんです。聞香(※)ではなく、お線香づくり体験だったのですが、和の香りについて知るいい機会だと思って飛び込みました。

山田:そうでしたか。これはもう、ご縁としか言いようがありませんね(笑)。

※聞香=最も丁寧な形式で、香木の純粋なかおりを愉しむこと

—–  きっかけは、衣装香との出合い

山田:確か、茨城の『澤屋』さんが会場でした。


「澤屋」のオリジナル衣装香
「澤屋」のオリジナル衣装香

新井:はい、結城紬の素敵なお店でした。そのお店に置いてあった、香雅堂さんのつくった衣装香を見たのが、宿にも取り入れる直接のきっかけとなりました。それまで衣装香=防虫剤のイメージでしたが、そこで初めて、あんなに小さくて素敵なものがあると知りました。

原田:香りがいいだけでなく、ちゃんと効能があるんですものね。日本文化の継承を使命とする『坐漁荘』にはピッタリだと、新井さんから提案されました。

—–  オリジナルの香りを作りたい!

新井:「これは!」と思って、早速買って帰りました。そして自宅で使っているうちに、『坐漁荘』オリジナルの香りを作りたいという気持ちが芽生えたんです。

山田:『澤屋』さんが会場でなかったら、衣装香とは違う形で取り入れていたかもしれませんね。でも衣装香は、主張しすぎることがなく、奥ゆかしい香りの演出ができますから、いい選択だったと思います。

新井:「この落ち着く香りはなんだろう」と、思っていただければうれしいですし、そうでなくても、無意識のうちに記憶に刻まれる気がします。それにこの香りを持ち帰れるようにすれば、素敵なお土産になると思いました。香りは癒しにもつながりますし、旅のいい思い出になるのではないでしょうか。



『坐漁荘』からの依頼を受け、『麻布 香雅堂』はオリジナル衣装香の製作に着手。宿全体を包む雰囲気を香りに落とし込み、親しみやすい甘さを感じさせつつも、品の良い高級感のある香りを誕生させました。ベースとなるのはヤマモモ・桜・藤・大室山の熔岩石などの自然を活かした坐漁荘の庭園をイメージした香りです。


庭園にたわわに実るヤマモモ
庭園にたわわに実るヤマモモ

—–  総勢60人で香りを検討

山田:庭に群生するヤマモモのイメージを前面に出した香りを中心に、はじめは7種類ほどサンプルを提出させていただきました。最終的には、スタッフの皆さんの投票によって香りが決まったと伺っています。どのような手順で選んでいったのでしょうか。

原田:最初はそれぞれの香りから受けるイメージや好き嫌いなど、自由に感想を書いてもらいました。それを元に2種類に絞り、改めて意見を交換した上で投票しました。

山田:何人くらい投票に参加されたんですか?

原田:60人です。スタッフ全員が投票しました。


宿では聞香体験も可能
宿では聞香体験も可能

—–  香り選びが宿の本質を見直すきっかけに

山田:そんなに大勢の方が関わっていらっしゃるとは思いませんでした。

原田:これは宿全体の取り組みであるということを自覚してもらうために、スタッフ全員を巻き込みました。「坐漁荘を香りに例えると?」と自問し、じっくりと考える機会を得たのは大きかったと思います。

山田:香りをフックに、もう一度宿の本質を見つめ直したわけですね。

新井:宿の印象を決める重要なファクターになる香りを選ぶという体験を通し、自分たちが宿の運営に深く関わっているという自覚が持てたと思います。

—–  スタッフの意識が上向く、うれしい結果に

原田:今回香雅堂さんにご協力いただいた衣装香・香袋のプロジェクトは、とても価値のある試みだったと思います。結果としてスタッフの意識を高めることができたので、本当に感謝しています。

山田:こちらこそ、ありがとうございました。皆さんに気に入っていただけてよかったです。60人もの方のご意見を反映して完成させたこの香りが、今後どのように使われ、どのような効果をもたらすのか、本当に楽しみです。

(あとがき)

衣装香開発プロジェクト完了後も、『香雅堂』は『坐漁荘』にてお香に関する研修を継続。参加するスタッフは、お客様に対して30分程度の聞香体験を提供できるようになることを目標に、実習形式で聞香を学んでいます。また、旅館内の『寧 neen SPA』でも和の香りを活かした施術の可能性をともに探るなど、今後も様々な展開がありそうです。


夜の坐漁荘

「ABBA RESORTS IZU – 坐漁荘」
(アバリゾート イズ ザギョソウ)

〒413-0232 静岡県伊東市八幡野1741
TEL:0557-53-1170
FAX:0557-53-1171
URL:http://zagyosoh.com/

 
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