京都・島原「角屋」で源氏の香りを再現(2)

報告がすっかり遅くなりましたが、8月下旬の蒸し暑い土曜日に、久方ぶりの京都を味わってきました。

山下智子さんが京ことばで「桐壷」を語る会場「角屋もてなしの美術館」は、江戸時代の“揚屋”
(現代の料亭)の建物を当時のままに保存・管理されている素敵な空間です。
島原の大門をくぐって西に進むと、やがて古めかしい黒塀が目に入ります。左に曲がると、
外観が顕になります。

戸をくぐって中に入ると、新撰組に刀傷をつけられた柱がそのまま残されている、
異空間のような光景に出会い、しばし呆然としてしまいました。

案内されて屋内を進み、会場となる「松の間」に入ります。
後で知りましたが、庭にあって一際存在感を放つ「臥龍の松」が、部屋の命名の理由だそうです。

床に向かって右手の襖に描かれた「金地桐に鳳凰図」(岸 連山筆)。
あたかも実在する鳥を描写したかのような迫力ある筆致に感銘を受け、一部を撮らせていただきました。

満席のお客様たちを江戸時代そのままの空間から平安時代の宮中へとタイムスリップさせるべく、
天然の麝香の強烈な匂いと、それに負けずに調和を整えることができる最上質の伽羅、そして最後に、
平安時代に実在した調合に基づいて再現した「光る君の香り」(薫物=練香)をお聞かせしました。

大座敷に漂う「黒方」の余香が、新たな境地に目覚めますます深化する山下智子さんの語りの世界に、
多少なりとも彩を添えることができたとすれば、幸いに存じます。

(麻布 香雅堂 主人)