「源氏の薫り」手づくり体験―東慶寺で特別開催

昨年の晩秋だったでしょうか、北鎌倉・東慶寺(松岡山東慶総持禅寺)の奥様から『東慶寺ならではの「薫物(練香)づくり体験」
を企画したいのだけれど…お願いできるかしら?』とのご相談を頂戴しました。

武者小路千家若宗匠の下で茶道のお稽古を続けておられる奥様の“ほんもの志向”ぶりを良く存じ上げているだけに、
『有意義で、面白い手づくり体験が実現できる!』と直感し、即答で引き受けさせていただきました。

内容を「平安時代の方(ほう=調合・制作方法)に可能な限り忠実に、天然の麝香を用いる方及び用いない方の、2種類の再現を図る」
と設定し、準備を進めました。

成否の鍵を握るのは原材料の選定ですが、極めて強烈な香気を放つ天然の麝香を用いる場合には、それに対抗してバランスを調える、
上質の香木(伽羅・沈香)を用意する必要があり、最大の難関でした。
しかも、当初は“15名様限定で”と想定していたものが、2日に亘って30名様を対象とすることになり、香木の選定に大童でしたが、
何とか準備が整い、当日(2日・4日)を迎えました。

急激に寒気が緩んだとは言え、庭の梅はまだ蕾のまま。僅かに一輪、二輪が咲き始めたばかりで、鶯の初音どころか、
聞こえるのはリス達が駆け回る枝の音ばかりでした。

会場となった白蓮舎には熱心な皆さんが集われ、主要な原材料である香木や麝香の現物を手に取り解説に耳を傾け、
昼食を挟んで「侍従」及び「黒方」の制作に取り組まれました。

若いお嬢さんトリオが「いい匂い!」と喜んで下さったのが印象的でしたが、皆さん手を動かし始めると途端に無口になり、
作業に熱中される様子を微笑ましく拝見しました。

長時間に亘った講座にもかかわらず、あっという間に終わってしまったと感じる、充実した楽しい一日(二日でしたが…)
を過ごすことができました。

“ 空気を清浄にし、邪気を祓い、寿命を延ばす ”とされ、それゆえに「香薬」と呼ばれた天然香料の“ ほんものの味わい ”
に触れることによって、参加者の皆さんの「香り」に対する意識がどのように変わっていくのか、楽しみに感じています。

(麻布 香雅堂 主人)