伽羅の分類と、6月の推奨香木「仮銘 風の梅が香」

ここ数年でしょうか、「緑油系の伽羅」とか「黄油系の伽羅」とかの言葉を耳にする機会が増えました。
そのせいもあってか、『伽羅は、やはり緑油系が最上なのですか?』等のご質問を頂戴します。
そこで、6月の推奨香木を「黄油伽羅」と謳わせて戴くに際して、私見をまとめておきます。

伽羅を「黒油」・「紫油」・「黄油」・「緑油」・「白皮緑油」などと分類して呼称する習慣は、その昔、
中国に端を発したものと考えられます。
30年くらい前までは、香港には様々な外見の伽羅の塊が豊富に集積されていて、現地の人々は、
それらを見かけの色から判断して「何となく紫っぽい=紫油」、「何となく苔っぽい=緑油」
などと分類していたのです。
確かに、「そう言われれば、何となくそんな色に見えるかも…」という程度の違いはありました。
そして不思議なことに、香気の内容にも微妙な違いが確かに感じられます。
輪切りにすると断面は何れも黒っぽいのですが、適切な火加減で聞いてみると、それぞれの分類に、
それなりに「匂いの筋」が通っていることが理解できるのでした。
(ただ、「白皮緑油」だけは、実物と思える事例に出会えた体験はありません。)

「どの分類が最上か?」と問われれば、私見では、『上質と思える緑油・黒油・紫油・黄油伽羅は、
それぞれに得も言われぬ特有の味わい深さを秘めていて、優劣では無く、好みの問題になります。』
と答えることになります。
(極端な例ですが、一木四銘で著名な宇和島伊達家の『柴舟』は最上質の黄油伽羅ですし、
同じく『白菊』は、紫油伽羅のように思えます。)(伝説の名香に関しては、謎が深いです。)

問題は、“分類に値する、上質な伽羅に出会えるかどうか” にあると言えます。
つまり、樹脂化が進行した歳月が比較的に短く原木(沈香樹=ジンチョウゲ科アキラリア属)
の組織が十分に変質を遂げていない「○○系伽羅」達は、むしろ一括して「浅い伽羅」或いは「新伽羅」
とでも称するのが適切で、それらは「伽羅らしい伽羅」とは全く別のものだと考えています。
(木所としての「新伽羅」に関しては少し複雑で、機会を改めて触れさせて戴きます。)

現代では、伽羅に限らずあらゆる木所において、上質の香木に出会える機会が減少しています。
それに反比例して、価格だけは上昇の一途を辿っています。
表現を変えると、買っても良いものかどうか、価格だけでは判断し辛くなっていて、信頼のおける基準
を見つけることが困難な状況になっています。

そんな中、6月の推奨香木として「仮銘 風の梅が香」を選びました。
Kaorimiyabi での発売は、6月10日(火)7:00を予定しています。

「仮銘 風の梅が香」は、これまでに体験した中でもかなり上質と言える「黄油伽羅」です。
「仮銘 風の移り香」と同様に、数十年前に輸入された香木でありながら加熱しない状態でも
芳醇な香気を放つところから、以下の和歌から仮銘を付けさせていただきました。

大空を おほはん袖に つつむとも あまるばかりの 風の梅が香 (後水尾院)(御集)

「黄油伽羅」の特徴は、上品な「辛」にあると認識しています。
大きな塊ではありませんので、今回の分木も僅かな数量となり申し訳ございませんが、ご容赦のほど、
お願い申し上げます。
また、分木の単位があまり小さくても計量の正確性に影響が生じることもあり、勘案して販売の単位を
決めさせて戴きました。併せてご諒承のほど、よろしくお願い申し上げます。

(麻布 香雅堂 主人)