香木鑑定の近況

この数年、かってない頻度で、ご依頼の件数が増えています。

その傾向は、元々の主旨に沿った『手許に残されている香木らしきものが、一体どのような品質のものか、
産地はどの辺りか、そもそも本物の香木なのかどうか知りたい』というご要望にお応えする場合以外にも、
『手持ちの沈香・伽羅を手放す好機が到来しているように感じるので、買い取りを前提として精査して
欲しい』とのご依頼が急増していることによるものです。

沈香・伽羅の価格が急騰を続けたことがその背景にあり、その要因は、中国における需要の激増にあった
と感じています。
(並行して、ありとあらゆる偽物が以前にも増して出回るようになり、鑑定ご依頼数の激増に拍車を
かけているようです。)

中国における富裕層は膨大で、彼らは自国の通貨の変動に拘わらず自らの富を安全に確保するために、
価値が不変もしくは漸増すると思われるあらゆるものを購入しようと躍起になってきたようです。

その対象として象牙、犀角、翡翠、赤珊瑚が珍重され、やがては沈香・伽羅も含まれるようになりました。

約30年以前には、沈香・伽羅は東南アジアの産地から主に香港・シンガポールに潤沢に集まり、我々
専門業者は良質のものを厳選して日本に輸入してきたのですが、それらを逆輸入するべく、彼らは
バイヤーを派遣し、買い漁り始めたのです。

当初は「何でも良いから高値で買っていく」傾向も見受けられましたが、徐々に「良質のものしか買わない」
という現象が顕著になり、現在では「高品質の伽羅だけを狙う」という状況になり、価格もようやく落ち着き
を見せ始め、高騰に歯止めが掛かったと感じられます。

これは、昔は知られていなかった(輸入の対象とはみなされていなかった)スリランカ産の沈香が大量に
出回ったこと、中国国内に腐敗を排除する動きが高まり、高価な物品を贈答することが困難になり始めている
こと等が大きな要因と考えられます。

香雅堂では、これらの動きに左右されることなく、聞香に値する優れた香木を我が国の伝統文化の継承
・発展に役立たせていただくため可能な限り高価で買い取り、国内に留めることを目指しています。

(麻布 香雅堂 主人)