鑑賞香席で「五味」という概念に触れる―東慶寺式楽茶会

井上ひさし作『東慶寺花だより』を原案とする映画『駆け込み女と駆け出し男』で話題の松岡山東慶寺
(北鎌倉)には志野流香道御家元による「東慶寺教場」が設けられており、毎月第二日曜日に寒雲亭で
稽古が行なわれています。
(稽古に先立って、香道体験席も設けられています。)

教場開設のきっかけとなったのが、10年ほど前に、恒例の式楽茶会に香席を開筵するお手伝いを始めた
ことでした。
それ以来、上巳の節句(ひな祭り)の会には組香席が設けられ、皆様にお喜びいただいていますが、加えて
近年では鑑賞香席のご要請を頂戴し、白蓮舎(立礼席)にて担当させていただいています。

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心掛けていますのは、優れた香木の香気を文字通り「鑑賞」していただくことですが、毎回、隠れた主題を
設定しています。
例えば「伽羅と真那賀(或いは羅国)との違いに触れる」ことにより、なぜ伽羅を真那賀(或いは羅国)
として用いては混乱を招くのかを知っていただく等です。

今年の主題は、「五味の内容に触れる」に設定することにしました。
そうなりますと、どうしても“教科書”を引き合いに出す必要があります。
何故なら、「五味」とは誰にでも理解できる客観的な事実ではなく、「師説を受けて学ぶもの」だからです。
志野流香道御家元のご登場を仰ぐわけにも参らず、教科書には、先代御家元である第十九世蜂谷幽求齋宗由
宗匠が付銘された次の伽羅三種を使わせていただきました。

1. 軒の藤
2. 指月の濱
3. 蝉時雨

各々の香木に添えられている「極(きわめ)」によりますと『軒の藤』の特徴は「鹹(しおはゆい)」
にあり、『指月の濱』は「甘苦辛」のバランスに特徴があり、『蝉時雨』の特徴は「酸」にあります。
同じ伽羅でも同じように香気を放つものは二つと存在しないという事実を、立ち始めから火末まで何度も
何度も聞香炉をお回しして堪能していただくうちに、ご理解いただけたことと思います。

式楽茶会には、どなたでもご参加いただけます。
香木好きの皆様、ぜひ来年、ご一緒下さることをお勧め申し上げます。

(麻布 香雅堂 主人)