温故知新塾(かなっくホール)を終えて

去る26日(日)、チリチリと焼かれるような陽射しと60%を超えそうな湿度の中、東神奈川の
「かなっくホール」に伺って参りました。

チケットが完売してから3か月が経っており、もう忘れてしまわれている方も沢山おられるのでは?
とか、酷暑にダウンしておられる方々もおられるのでは?などと勝手に想像していましたが、会場には
続々と参加者の皆さまが到着され、午前・午後の部を通じて欠席者は1名のみで、驚かされました。

更に驚かされたのは、最初に聞香経験の有無を質問したところ、約9割が未経験者だったことです。
香席を行なうわけでもなく、「香を聞く」という極めて地味な講座に申し込まれる方々は、きっと
日頃から聞香に親しんでおられるものと想像していたのですが、見事に外れてしまい、想定外の事態に、
一瞬、頭の中が真っ白になりました。
経験豊富な方々と、聞香の核心に迫るお話ができるものと想定していたからです。
元々私の講座の特徴は、先ず参加者の皆さまが知らないところ・解らないところを可能な限り把握した
上で一緒に考察するという、言わば「行き当たりばったり」的なところにあると自覚していますが、
今回の場合、設定していたテーマから想定していた進行のイメージが、いきなり崩れ去ったと
感じたのです。

ところが、最も驚かされた事態が、開始から30分ほどで起こりはじめました。
次々に発せられるご質問が、ことごとく見事に的を射ているのです。
聞香は初めてでも、歴史・文学・芸術といった関連分野に対するご関心や造詣の深さがひしひしと
伝わってきて、そんな皆さま方のおかげで、とても素敵な180分間(90分×2)を過ごさせていただけたと
感謝しています。

ご高承の通り、香雅堂はとても小さな会社です。
そして、とても小さな会社であるからこそお客様に提供できるメリットを、大切にしようと考えています。
もちろん、デメリットもあります。色々な方面から頻繁にご依頼・お問い合わせを頂戴する出張講座等の
企画の大半は、日程や人員の問題からお断りせざるを得ないことも、その一つです。

「温故知新塾Vol.5」での体験は、「和の香り、ほんものの香に親しむ」という行為が決して一握りの方々の
関心事ではないことを、改めて教えてくれました。
古来、「忙しいという文字は、心を亡くすと書く」と言われますが、肝に銘じて、聞香がささやかな流行に
終わらず文化として根付き継承されるよう、微力を尽くしたいと思います。

(麻布 香雅堂 主人)