(7)香木のたき方

香道の手前作法の中で最も重要とされるのは「灰手前」すなわち、香木を炷くために聞香炉の準備を調えることだと考えられます。

今号では、香木の炷き方に触れたいと思いますが、これはあくまでも一般的な方法の紹介であり、手前作法の解説ではないことをご承知おきください。手前作法は香道の流派に属する大事であり、家元・宗家を通じて伝授されるものだからです。

一、まず、聞香炉に香炭団を埋けます。(写真①、断面図A)香炭団は全体が赤くなるまでよくおこしてください。聞香炉の正面を、自分の方に向けておきます。

二、次に、聞香炉の正面の内側に火箸をさして、中心に向かって灰をかき上げます。(写真②、平面図B)聞香炉を左に回しながらこの動作を繰り返し、一周させる間に香炭団を埋めてしまします。

三、山のようにかき上げた灰を、聞香炉を左に回しながら、灰押で円錐型に押さえていきます。(写真③、平面図C、断面図D)押さえる力が強すぎると灰が固くしまり、酸素が補給し辛くなって中の香炭団が消えてしまいますので注意してください。

四、羽箒を聞香炉の内側に垂直に立てて固定し、聞香炉を左に回しながら掃き清めます。(写真④、断面図E)縁についた灰も羽箒で落とします。

五、聞香炉を左に九十度回転し、円錐型に整えられた灰の表面に「聞筋」といわれる筋を一本だけ入れます。(写真⑤、平面図F、断面図G)

六、聞香炉の中心に、香炭団に向かって垂直に火箸をさし「火窓」を開けます。(写真⑥、断面図H)

七、聞香炉に右手をかざして、掌に感じる熱を確かめます。(写真⑦)

八、銀葉を乗せます。(写真⑧、断面図I)

以上で準備が調いました。

これまでの八段階の作業に要する時間は、香炭団をおこすための数分間を加えて、最短で約10分間かと思います。この約10分間を長いと感じるかどうかは各人の価値観によると思われますが、少なくともこれだけの過程を経なければ、味わうことのできない香りが世の中に存在するということは、紛れもない事実なのです。

さて、良い火加減が調ったかどうかを的確に判断するには、思考錯誤のくり返しが必要になります。炷こうとする香木によって、適温は微妙に異なります。それを覚えさせるのは、右手の薬指の先端です。熱くなっている銀葉の表面に軽く触れることで、一瞬のうちに感じとるのです。弱いと思ったら銀葉を少しおさえて香炭団との距離を縮め、強い場合には銀葉をもう一枚乗せて調整します。

九、銀葉に香木を乗せます。(写真⑨)

十、聞香炉を持ちます(写真⑩)

十一、香を聞きます。(写真⑪、⑫)右手で聞香炉を覆い、人差し指と親指の間に開けた隙間から香りを出すようにします。聞香炉を傾けないよう、水平に保ってください。